はじめに
BtoB取引では、すべての取引先へ同じ商品を同じ価格で販売するとは限りません。
例えば、
- 一般の小売店には卸価格で販売
- 大口取引先には特別価格を適用
- 代理店だけが購入できる商品を用意
- 商品をケース単位で販売
- 購入数量に応じて単価を変更
といった取引条件があります。
電話、FAX、メールで注文を受ける場合は、営業担当者が取引先ごとの価格表を確認し、注文内容へ反映することもできます。
しかしBtoB ECでは、ログインした取引先に対して、適切な商品・価格・注文条件を自動的に表示しなければなりません。
こうした販売条件をShopify上で管理するための機能が、Shopify B2Bの「カタログ」です。
カタログを活用すると、取引先の区分や地域に応じて、販売する商品・価格・最低注文数・数量別価格などを設定できます。
一方、カタログを増やし過ぎると、どの取引先にどの価格が適用されるのか分かりにくくなり、価格改定時の運用負担も大きくなります。
今回は、Shopify B2Bのカタログ機能でできること、取引先別価格や数量ルールの設定方法、導入前に整理しておきたいポイントを解説します。
1. Shopify B2Bのカタログ機能とは?
Shopify B2Bのカタログとは、BtoB顧客へ販売する商品と価格をまとめて管理するための機能です。
カタログごとに、
- 販売する商品
- 販売しない商品
- 商品価格に対する一括調整
- 商品・バリエーションごとの固定価格
- 最低注文数
- 最大注文数
- 注文数量の増分
- 数量に応じた価格
などを設定できます。
作成したカタログをB2Bマーケットや会社のロケーションへ割り当てると、その対象となる顧客にカタログの条件が適用されます。
例えば、次のようなカタログを作成することができます。
- 一般卸売カタログ
- 多くの取引先に共通する商品を掲載
- 通常販売価格から30%引き
- 最低注文数は商品ごとに10個
- 大口取引先カタログ
- 通常販売価格から40%引き
- 100個以上の購入で追加の数量別価格を適用
- 一般卸売では販売しない業務用商品も掲載
- 代理販売店カタログ
- 代理店専用の商品を掲載
- 商品ごとに契約価格を設定
- 1ケース単位で注文
このように、取引先の条件に合わせて商品と価格を出し分けられることが、カタログ機能の特徴です。
2. カタログと「会社」「会社のロケーション」の関係
Shopify B2Bでは、取引先を「会社」として登録します。
さらに、会社に属する支店、店舗、営業所などを「会社のロケーション」として管理できます。
例えば、ある取引先に東京支店と大阪支店があり、それぞれ販売条件が異なる場合は、会社のロケーションごとに条件を分けて管理が可能です。
カタログは、主に次の方法で対象へ割り当てます。
■ B2Bマーケットに割り当てる
共通する条件を持つ会社のロケーションをB2Bマーケットにまとめ、そのマーケットへカタログを割り当てます。
具体的には、
- 国内の一般卸売先
- 国内の大口取引先
- 海外の販売代理店
- 特定地域の法人顧客
などの単位でグループ化ができます。
複数の取引先へ共通の商品や価格を適用したい場合に適した方法です。
■ 会社のロケーションへ直接割り当てる
特定の会社や拠点に固有の契約価格を設定したい場合は、会社のロケーションへカタログを直接割り当てます。
例えば、
- A社だけに適用する特別価格
- 特定店舗だけが購入できる商品
- 個別契約に基づく数量条件
などを管理できます。
ただし、会社のロケーションへのカタログの直接割り当ては、Shopify Plusプランで利用できる機能です。
Basic、Grow、Advancedプランでは、カタログをB2Bマーケットに割り当てて利用します。
3. Shopify B2Bのカタログでできること
① BtoB顧客に販売する商品を選ぶ
カタログには、すべての商品を含めることも、特定の商品だけを含めることもできます。
B2BとB2Cを一つのストアで運営する混合ストアでも、カタログを利用することで、ログインしたB2B顧客にだけ対象商品を表示できます。
ただし、商品の公開範囲は、オンラインストア、地域別カタログ(各マーケットに割り当てるカタログ)、B2Bカタログなどの設定が関係します。
B2B専用商品を作る場合は、B2Bカタログへ追加するだけでなく、一般顧客向けの地域別カタログから商品が除外されているかも確認しましょう。
② カタログ全体の価格を一括調整する
カタログ内の商品へ、一括で値上げ率または値下げ率を設定できます。
例えば、通常販売価格が10,000円の商品に対して、カタログ全体へ30%の値下げを設定すると、対象のB2B顧客には7,000円で表示されます。
次のような価格区分を設定する際に利用が可能です。
- 一般卸売価格:通常価格から30%引き
- 大口取引先価格:通常価格から40%引き
- 代理店価格:通常価格から35%引き
商品数が多い場合も、一つずつ価格を登録せずに、共通の掛け率を適用できます。
ただし、通常販売価格を変更すると、割合で設定したB2B価格も連動して変わります。
価格改定時の作業を減らせる一方、意図しないB2B価格にならないよう、変更後の確認が必要です。
③ 商品・バリエーションごとに固定価格を設定する
カタログ全体の価格調整だけでなく、特定の商品やバリエーションへ個別の固定価格を設定できます。
例えば、カタログ全体を30%引きにしながら、原価率が高い商品だけは20%引きにするといった設定が可能です。
商品ごとの固定価格が設定されている場合は、カタログ全体の価格調整よりも固定価格が優先されます。
- 通常価格:10,000円
- カタログ全体:30%引き
- 特定商品の固定価格:8,000円
上記のように設定した場合、この商品は7,000円ではなく8,000円で表示されます。
全体の掛け率では対応できない契約価格や、商品ごとに粗利率が異なる場合に活用できます。
一方、個別価格を多く設定すると、価格改定時の確認対象が増えます。
共通の掛け率で管理する商品と、固定価格を設定する商品を明確に分けておくことが大切です。
④ 注文数量の増分を設定する
「増分」は、商品を何個単位で注文できるかを定める数量ルールです。
12個入りのケース単位で販売する商品に対して増分を12に設定したとすると、顧客は12個/24個/36個/48個...という数量で注文できます。
13個や20個といった、12の倍数でない数量では注文できません。
BtoB取引では、
- ケース単位
- 箱単位
- セット単位
- パレット単位
などで販売することがあります。
増分を設定することで、注文後に営業担当者が数量を修正する作業を減らすことができます。
⑤ 最低注文数と最大注文数を設定する
商品やバリエーションごとに、1回の注文で購入できる最低数量と最大数量を設定できます。
- 最低注文数:10個
- 最大注文数:100個
- 増分:10個
と設定した場合、顧客は10個/20個/30個...といった単位で、最大100個まで注文が可能です。
最低注文数は、小口注文では採算が合わない商品や、一定数以上で販売したい卸売商品に適しています。
最大注文数は、在庫が限られている商品や、1社による大量購入を制限したい場合に利用できます。
数量ルールは商品バリエーション単位で判定されます。
例えば、色違いの商品にそれぞれ最低10個を設定した場合、「青を5個、白を5個」の合計10個では条件を満たしません。
青を10個、白を10個のように、各バリエーションで条件を満たす必要があります。
複数バリエーションの合計数量で判定したい場合は、標準機能だけで希望する運用を実現できるか、事前に確認が必要です。
⑥ 数量に応じた価格を設定する
量ベースの価格を設定すると、購入数量が増えるほど単価を下げられます。
通常のB2B単価が1個1,000円の商品であれば、
- 1個以上:1個1,000円
- 20個以上:1個900円
- 50個以上:1個850円
- 100個以上:1個800円
といった価格設定が可能です。
商品ごとに最大10段階の数量別価格を追加することができます。
大口注文を促進したい場合や、数量に応じて物流・製造コストを抑えられる商品に最適です。
ただし、数量別価格もバリエーション単位で判定されます。
色やサイズが異なる商品を合算して、数量別価格の条件を満たすことはできません。
また、量ベースの価格を設定するとその価格は固定価格として扱われ、カタログ全体の割合調整は適用されません。
価格を設計する際は、通常のB2B価格と各数量段階の単価を整合させる必要があります。
4. カタログの設定例
ここでは、メーカーが小売店と大口販売店へ商品を卸す場合を例に考えます。
通常販売価格が1個2,000円の商品について、次の条件を設定するとします。
【一般卸売カタログ】
- 対象:一般の小売店
- 価格:通常価格から30%引き
- B2B単価:1個1,400円
- 最低注文数:10個
- 増分:10個
- 最大注文数:設定なし
【大口取引先カタログ】
- 対象:一定の取引量がある販売店
- 基本価格:1個1,300円
- 最低注文数:20個
- 増分:10個
- 50個以上:1個1,200円
- 100個以上:1個1,100円
【代理店専用カタログ】
- 対象:販売代理店
- 商品:一般卸売商品と代理店専用商品
- 基本価格:商品ごとの契約価格
- 最低注文数:商品ごとに設定
- 増分:ケース入り数に合わせて設定
このように、取引先の区分ごとにカタログを作成し、該当するB2Bマーケットや会社のロケーションへ割り当てます。
ただし、実際の取引先ごとに異なるカタログを作成すると、カタログ数が増え続けます。
まずは取引条件を整理し、同じ条件を適用できる取引先をグループ化することが重要です。
5. 複数のカタログが適用される場合の価格
一つの会社のロケーションに複数のカタログが適用されることがあります。
このとき、同じ商品が複数のカタログに異なる価格で登録されていると、割り当て方によって表示価格が決まります。
複数のカタログを会社のロケーションへ直接割り当てた場合
同じ商品に異なる価格が設定されている場合、基本的には最も低い価格が表示されます。
また、その最低価格を設定しているカタログの数量ルールと量ベースの価格が適用されます。
同じ最低価格のカタログが複数ある場合は、先に作成されたカタログの数量条件が適用されます。
B2Bマーケットと会社のロケーションの両方から適用される場合
B2Bマーケットのカタログと、会社のロケーションへ直接割り当てたカタログの両方に同じ商品が含まれる場合は、より個別性の高い会社ロケーション側の価格が優先されます。
例:
- B2Bマーケットの価格:7,000円
- 会社ロケーションへ直接割り当てた価格:8,000円
→ 上記の場合、この会社には8,000円が表示されます。
必ずしも最も安い価格が適用されるわけではない点に注意が必要です。
複数のカタログを組み合わせる場合は、
- どのカタログが適用されるか
- 同じ商品が重複していないか
- どの価格が優先されるか
- どの数量ルールが表示されるか
をテスト用アカウントで確認すると安心です。
6. プランによるカタログ機能の違い
2026年10月時点で、Shopify B2BはBasic・Grow・Advanced・Shopify Plusで利用することができます。
数量ルールや数量別価格は、いずれのプランでも利用可能です。
一方、カタログ数や割り当て方法には違いがあります。
■ Basic・Grow・Advanced
この3つのプランでは、すべてのB2Bマーケットを通じて、最大3つの有効なカタログを割り当てられます。
特定の会社や会社ロケーションへカタログを直接割り当てることはできません。
そのため、一般卸売・大口取引先・代理店など、取引先を最大3つの価格区分へ整理できる場合に利用しやすい構成です。
取引先ごとに異なる契約価格が多数ある場合は、価格区分の標準化やShopify Plusへの変更を検討する必要があります。
■ Shopify Plus
Shopify Plusでは、B2Bマーケットへ割り当てるカタログを無制限に作成できます。
さらに、特定の会社や会社ロケーションへカタログを直接割り当てられるため、顧客ごとの契約価格へ対応しやすくなります。
各会社のロケーションには、マーケット経由の割り当ても含めて最大25個のカタログを割り当てられます。
次のような場合は、Shopify Plusが選択肢になります。
- 多数の価格区分がある
- 取引先ごとに個別価格を設定したい
- 拠点ごとに販売条件が異なる
- 地域別カタログと個別契約価格を併用したい
- カタログを使った販売条件が今後増える予定がある
プランを決める際は、現在のカタログ数だけでなく、取引先や価格区分が増えた場合も想定しましょう。
7. カタログは「価格表」ではなく販売ルールとして設計する
カタログという名称から、取引先へ表示する価格表を登録する機能だと思われるかもしれません。
しかし、Shopify B2Bのカタログは、価格だけでなく
- 誰に販売するか
- 何を販売するか
- いくらで販売するか
- 何個から販売するか
- どの単位で注文を受けるか
- 数量によって単価をどう変えるか
をまとめて管理する販売ルールです。
そのため、既存の価格表をそのまま登録するだけでは、実際の取引を再現できない場合があります。
カタログを作成する前に現在の取引条件を整理し、どの条件を共通化し、どの条件を個別に管理するか決めることが重要です。
まとめ
いかがでしたか?
Shopify B2Bのカタログ機能を利用すると、取引先の区分や地域に応じて、販売する商品・価格・数量ルール・数量別価格などを設定することができます。
一方、カタログを増やしすぎたり、複数の価格設定を無計画に組み合わせたりすると、運用が複雑になります。
重要なのは、複雑な取引条件をそのままシステムへ移行することではありません。
自社の販売ルールを見直し、共通化できる部分と個別に管理すべき部分を明確にすることです。
カタログを無理なく更新できる状態まで設計できて初めて、継続的に運用できるBtoB ECになります。
まずは自社の価格表や取引条件を並べ、「どの条件なら共通化できるか」を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
カタログ機能を単なる設定作業ではなく、これからの取引をより分かりやすく、運用しやすくするための仕組みとして活用していきましょう。