はじめに
ECサイトの売上を伸ばすためには、さまざまな施策への取り組みが考えられます。
例えば
- Web広告を強化する
- 商品ページを改善する
- クーポンを配布する
- メルマガやLINEを配信する
といった施策です。
しかし、個々の施策を実施しているにもかかわらず、期待したほど売上が伸びないことがあります。
その原因の一つが、特定の数値や領域だけを改善しようとする「部分最適」です。
ECの成果は、集客・購入・物流・顧客対応・リピート施策など、複数の要素が連動することで生まれます。
そのため、一つの施策だけが良くなっても、別の場所に課題が残っていれば、事業全体の成果には繋がりません。
そこで本記事では、EC改善が部分最適では成果に繋がりにくい理由と、売上を伸ばすために必要な「全体最適」の考え方について解説します。
1. ECにおける「部分最適」とは?
部分最適とは、特定の部署や業務、指標など、一部分だけを最適な状態にしようとすることです。
例えば、広告担当者が広告のクリック単価だけを改善したり、サイト制作担当者がページの見た目だけを変更したりするケースが挙げられます。
それぞれの取り組み自体が間違っているわけではありません。
問題は、その改善がEC事業全体の成果に繋がっているかを確認しないまま、個別の指標だけを追ってしまうことです。
クリック単価の低い広告から多くのユーザーを集められたとしても、購入に繋がらなければ売上は増えません。
また、商品ページの購入率が上がっても、返品率が高くなったり、利益率の低い商品に注文が集中したりすれば、事業として良い結果になっているとは限りません。
つまり、部分最適では、施策単体の成果は出ていても、EC事業全体では成果が出ていないという状態が起こります。
2. ECの売上は複数の要素で構成されている
ECサイトの売上は、大きく次のように表せます。
さらに、継続的な事業成長まで考える場合は、新規購入だけでなく、リピート率や購入頻度も重要になります。
例えば、アクセス数を20%増やしても、購入率が下がれば売上はほぼ変わらない可能性があります。
反対に、購入率が高いサイトでも、十分なアクセスがなければ売上は伸びません。
また、売上が増えても、広告費・値引き・配送費・決済手数料などが増えれば、利益が残らないこともあります。
EC改善では、売上を構成する要素だけでなく、
- 粗利率
- 顧客獲得単価(CPA)
- リピート率
- 顧客生涯価値(LTV)
- 返品率
- 在庫回転率
- 運用にかかる工数
なども含めて考える必要があります。
EC事業では、一つの施策が複数の指標へ影響します。
だからこそ、特定の指標だけを良くするのではなく、施策によって事業全体がどのように変化するのかを見ることが重要です。
3. 部分最適では成果が出にくい理由
ボトルネックが別の場所に残っている
ECサイトの成果を妨げている最大の要因を「ボトルネック」と呼びます。
改善施策を実施しても、本当のボトルネックへ対応できていなければ、大きな成果には繋がりません。
仮にアクセス数が不足しているように見えても、実際の課題は商品価格や配送条件にあるかもしれません。
その状態で広告費を増やすと、多くのユーザーをサイトへ誘導できても、購入せずに離脱する人が増えるだけです。
また、カート画面の使いやすさを改善しても、商品ページで商品の魅力や違いが伝わっていなければ、そもそもカートまで進んでもらえません。
成果を伸ばすためには、改善しやすい場所ではなく、事業全体の成果を最も妨げている場所を見つける必要があります。
施策同士が連動していない
EC改善では、一つの施策だけで購入まで完結するとは限りません。
広告を見たユーザーは、商品ページで情報を確認し、他の商品と比較した上で、配送条件や支払い方法などを確認して購入を判断します。
購入後も、商品の到着や問い合わせ対応、メルマガ配信などを通じてブランドとの関係が続きます。
例えば、広告で「初めてでも安心」と訴求しているにもかかわらず、商品ページに使い方や返品条件が掲載されていなければ、広告とサイトの内容が繋がりません。
また、新規顧客向けのクーポンで購入者を増やしても、購入後のフォローがなければ2回目の購入には繋がりにくくなります。
施策を個別に考えるのではなく、ユーザーが商品を知ってから再購入するまでの流れに沿って連動させることが大切です。
短期的な数値だけで判断してしまう
値引きやクーポンの配布は、短期的に購入率を高めやすい施策です。
しかし頻繁に実施すると、定価では購入されにくくなったり、セールを待つ顧客が増えたりする可能性があります。
広告についても同様です。
短期間の売上だけを見て広告費を拡大すると、一時的に注文数は増えても、顧客獲得単価が上昇し、利益が残らなくなることがあります。
ECでは、当月の売上だけでなく
- 獲得した顧客が再購入しているか
- 値引きをしなくても選ばれているか
- 顧客一人あたりの利益が増えているか
- 継続して実施できる運用になっているか
まで確認することが重要です。
4. EC改善で起こりやすい部分最適の例
集客だけを増やす
売上が伸びないとき、最初に広告を増やそうと考えることがあります。
しかし、商品ページの情報不足や分かりにくい送料表示、複雑な購入手続きなどが原因で購入率が低い場合、アクセス数だけを増やしても離脱するユーザーが増えるだけです。
広告費を増やす前に、
- 広告と遷移先ページの内容が一致しているか
- 商品の魅力や違いが伝わっているか
- 購入前の不安を解消できているか
- スマートフォンで購入しやすいか
- 送料や配送日が分かりやすいか
などを確認する必要があります。
集客施策は、ユーザーを受け入れるサイト側の準備とセットで考えましょう。
購入率だけを高める
購入率は、ECサイトにおける重要な指標です。
ただし、購入率だけを優先すると、過度な値引きや強い訴求に依存してしまうことがあります。
例えば、大幅な割引で購入率が上がっても、利益率が大きく下がれば、広告費や運営費を回収できません。
また、商品の内容を実際より良く見せて購入を促すと、返品や低評価のレビューが増え、長期的な信頼を損なう可能性があります。
購入率を評価する際は、客単価・粗利・返品率・リピート率などもあわせて確認することが重要です。
サイトの見た目だけを変える
ECサイトをリニューアルする際に、デザインを刷新するだけで売上が伸びると考えてしまうケースがあります。
もちろん、ブランドイメージや視認性を改善することは大切です。
しかし、売上が伸びない原因が商品構成や価格、集客方法、配送条件などにある場合、見た目を変えるだけでは根本的な解決になりません。
リニューアルでは、
- 誰に何を伝えるのか
- どの商品を優先して販売するのか
- どのページで離脱しているのか
- 購入前にどのような不安があると考えられるか
- 公開後に誰がどのように改善していくのか
まで整理する必要があります。
デザインは目的ではなく、課題を解決するための手段として考えることが大切です。
ツールの導入自体が目的になる
EC運営では、アクセス解析・CRM・MA・レビュー・レコメンドなど、さまざまなツールを利用できます。
しかし、課題や活用方法が整理されていない状態で導入すると、機能を十分に使えずに費用や運用負担だけが増えることがあります。
例えば、CRMツールを導入しても、顧客をどのように分類して誰に何を配信するかが決まっていなければ、成果には繋がりません。
ツールを選ぶ前に、
- どの課題を解決したいのか
- どの指標を改善したいのか
- 誰が運用するのか
- 必要なデータを取得できるか
- 導入後に効果をどう検証するか
などを明確にしましょう。
新規顧客の獲得だけを重視する
新規顧客の獲得は、EC事業の成長に欠かせません。
一方で、新規顧客を獲得し続けても、一度しか購入されなければ広告費を継続的にかけ続ける必要があります。
初回購入後のフォロー、商品の使い方の案内、適切なタイミングでの再購入提案などがなければ、顧客との関係を十分に育てられません。
新規獲得とリピート施策を分けて考えるのではなく、初回購入の段階から
- どのような顧客に継続してもらいたいか
- 次にどの商品を提案するか
- どのタイミングで連絡を送るか
- 再購入を妨げる要因は何か
まで設計する必要があります。
5. 全体最適でECを改善するための進め方
① 事業全体の目標を明確にする
まずは「ECを改善して、何を実現したいのか」を明確にします。
単に売上を増やすだけでなく、
- 利益を増やしたい
- 新規顧客を獲得したい
- リピート購入を増やしたい
- 特定商品の販売を強化したい
- 運用負担を減らしたい
- 在庫を適正化したい
など、現在の事業フェーズに合った目標を設定します。
売上を伸ばすことと利益を増やすことでは、優先する施策が異なる場合があります。
最初に目標を共有することで、各部門や担当者が同じ方向を向いて改善を進めやすくなります。
② 顧客の行動を一連の流れで捉える
次に、顧客が商品を知ってから購入し、再購入するまでの流れを整理します。
例としては、
- 広告やSNSで商品を知る
- ECサイトを訪問する
- 商品の特徴や価格を確認する
- 他の商品と比較する
- カートへ追加する
- 購入手続きを完了する
- 商品を受け取って使用する
- 問い合わせやレビューを行う
- 再購入する
という流れです。
各段階で、顧客がどのような疑問や不安を感じているかを考えます。
アクセス解析の数値だけでなく、検索キーワード・問い合わせ内容・レビュー・返品理由なども確認すると、数値だけでは見えない課題を発見しやすくなります。
③ ボトルネックを特定する
顧客と事業データを整理したら、下記のような、成果を最も妨げているボトルネックを特定します。
- サイトへの流入が少ない
- 商品ページからカートへ進まない
- カートには入るが購入されない
- 初回購入は多いが再購入されない
- 売上は増えているか利益が残らない
- 注文の増加に運用体制が追い付かない
すべてを同時に改善しようとすると、施策ごとの効果が分かりにくくなり、社内の負担も増えます。
まずは事業全体の影響が大きい課題を見極め、優先順位を付けることが重要です。
④ 施策が与える影響を事前に考える
改善施策を決める際は、対象となる指標だけでなく、他の領域へどのような影響があるかも確認します。
送料無料の条件を変更するとすれば、
- 購入率
- 客単価
- 配送費
- 粗利
- まとめ買い率
などへの影響が考えられます。
一つの施策によって、どの指標がどのように変化すると想定しているのかを整理しておくと、実施後の評価もしやすくなります。
⑤ 検証と改善を繰り返す
EC改善は、一度の施策で完了するものではありません。
施策を実施した後は、事前に設定した指標を確認し、想定した変化が起きたかを検証します。
その際、施策対象の指標だけを見るのではなく
- 売上と利益の両方が改善したか
- 新規顧客と既存顧客のどちらに影響したか
- 問い合わせや返品が増えていないか
- 運用負担が大きくなっていないか
- 一時的な効果ではなく継続性があるか
まで確認することが大切です。
結果が想定と異なった場合も、施策の失敗だけで終わらせず、その理由を分析して次の改善に繋げます。
小さく実施し、検証しながら調整を続けることが、全体最適へと繋がります。
6. 全体最適とは、すべてを同時に改善することではない
全体最適という言葉から、サイトや広告、CRM、物流など、すべての領域を同時に改善しなければならないと思われるかもしれません。
しかし、全体最適とはすべてを一度に変えることではありません。
事業全体の構造を把握した上で、現在最も優先すべき課題から改善することです。
限られた予算や人員の中で成果を出すためには、
- どの課題が売上や利益を妨げているか
- どの施策が他の領域にも良い影響を与えるか
- 現在の体制で実行・継続できるか
- 施策の効果を検証できるか
という視点から優先順位を判断する必要があります。
例えば、アクセス数が十分にある一方で商品ページの離脱が多い場合は、広告費を増やすよりも、商品情報や購入導線の改善を優先した方が成果に繋がりやすいでしょう。
初回購入者は多いものの再購入が少ない場合は、新規集客をさらに増やす前に、商品体験や購入後のコミュニケーションを見直す必要があります。
全体を見た上で改善箇所を絞ることが、全体最適の考え方です。
まとめ
いかがでしたか?
ECの成果は、集客・サイト構成・商品・価格・物流・顧客対応・リピート施策など、複数の要素が連動することで生まれます。
そのため、広告のクリック単価やサイトの購入率など、一つの指標だけが改善しても、事業全体の売上や利益に繋がるとは限りません。
EC改善で重要なのは、施策の数を増やすことではなく
- 事業として目指す成果を明確にする
- 顧客行動を一連の流れで捉える
- データと顧客の声からボトルネックを特定する
- 施策が他領域へ与える影響も確認する
- 優先順位を付けて検証と改善を繰り返す
ことです。
「広告は改善しているのに売上が伸びない」
「さまざまな施策を実施しているが成果が見えない」
という場合は、個別の施策ではなく、EC事業全体の繋がりを見直す必要があるかもしれません。
私たちアスタスでは、サイト上の数値だけでなく、集客・商品・顧客体験・運用体制なども含めて現状を整理し、事業課題に応じた改善をご支援しています。
何から改善すべきか分からない、社内で施策が分散している、改善の優先順位を整理したいという方は、ぜひお気軽にご相談ください。