はじめに
今や、専門知識がなくても本格的なサイトが作れる時代。CMS(コンテンツ管理システム)は、誰でも簡単にウェブサイトを構築できるツールとして、企業の間で急速に普及しています。特にECサイトに対応したCMSは、オンラインショップの立ち上げを加速させ、多くの企業に新たなビジネスチャンスをもたらしています。
しかし、どんなに優れたCMSでも、自社の規模や運用体制、スキルセットに合っていなければ、その魅力を活かしきれません。選び方を間違えれば、構築の段階でつまずくだけでなく、運用の現場で大きな負担となることも。
そこで本記事では、ECサイトの成功を左右する「CMS選び」にフォーカス。数ある選択肢の中から、自社にぴったりのCMSを見つけるための視点や判断軸をご紹介します。CMSは“作る”だけでなく、“育てる”もの。だからこそ、はじめの一歩が肝心です。
そもそもCMSって何?
CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)とは、Webサイトの「中身」をまとめて管理できる便利な仕組みです。文章や画像、レイアウトといった要素を一元管理できるため、サイト運営を効率化する強力なツールとして、多くの企業に活用されています。
もしCMSを使わずにWebサイトを作ろうとすれば、HTMLやCSS、JavaScriptといった専門的なコードを書く必要があります。つまり、エンジニアやデザイナーの力を借りなければ、ページの作成や更新すら難しくなってしまいます。
その点、CMSなら専用の編集画面が用意されており、プログラミングの知識がなくても直感的な操作でコンテンツの作成・更新が可能です。まるでブログを書くような感覚で、誰でも簡単にWebページを育てていけます。
さらに、多くのCMSはパソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットなど、さまざまなデバイスに対応しているため、訪れるユーザーにとっても見やすく快適なサイト環境を整えることができます。
また、多くのCMSは、SEO(検索エンジン最適化)に配慮した設計が施されています。GoogleやYahoo!といった検索エンジンで自社サイトを上位に表示させるための土台が、あらかじめ整っているのです。メタ情報の設定やURL構造の最適化、スマホ対応といったSEOに欠かせない要素も、専門知識がなくても簡単に対応できるのが魅力です。
ITテクノロジーに関するデータを調査しているW3Techsの調査によると、2025年5月7日時点でのインターネット上にある全WebサイトのCMS利用率は約71%となっています。
中でも、世界中で圧倒的なシェアを誇るのが「WordPress」や「Shopify」といったCMSです。直感的な操作性と高い拡張性を兼ね備えており、個人から大企業まで、幅広いユーザーに支持されています。
こうした背景から、CMSはもはや「あったら便利」なツールではなく、「なくてはならない」存在へと進化しています。企業にとっても個人にとっても、Webサイト運営の成功を左右する心強いパートナーと言えるでしょう。
CMSでECサイトを構築する、その「賢い選択」とは?
1. 専門知識がなくても始められる。だからCMSは心強い
かつてWebサイトを立ち上げるには、HTMLやCSS、JavaScriptといったプログラミング言語の知識が必要不可欠でした。加えてデザインやUIの設計まで求められるとなれば、エンジニアやデザイナーの力なしには成り立たなかったのが現実です。
しかし、CMSを使えばそんな専門知識がなくてもOK。WYSIWYG(What You See Is What You Get)と呼ばれる機能により、入力した内容がそのままページに反映される直感的な操作が可能になります。まるでプレゼン資料を作るような感覚で、誰でもWebページを構築・更新できるのです。
この「誰でも扱える」という特長が、チームでのサイト運営にも大きな強みを発揮します。情報発信のスピードがカギを握るECサイトにおいて、複数の担当者で役割分担しながら、コンテンツを随時更新していける体制は非常に重要です。
2. ECサイトに必要な機能が揃っている
CMSには、ECサイト運営に欠かせない基本機能が最初から用意されている場合が多く、導入直後から本格的なショップ運営が可能です。
決済システムや商品検索、ショッピングカートといった顧客向けの機能はもちろん、在庫管理、注文管理、顧客情報の一元管理など、運営側に必要な機能も充実。さらに、多言語対応や複数通貨、地域別税率の自動設定など、グローバル展開を見据えた機能まで揃っているCMSもあります。
もし標準機能だけでは足りない場合でも心配いりません。CMSには豊富なプラグインや外部ツールとの連携機能が用意されており、欲しい機能を後から追加することも簡単です。不要になった機能は、ワンクリックで無効化するだけ。常に“今のビジネスに合った形”へ柔軟に対応できるのが、CMSならではの魅力です。
3. 自由にカスタマイズできるから、ブランドの個性を表現できる
多くのECプラットフォームでは、デザインや機能に一定の制約があるため、他社との差別化が難しくなりがちです。ページ構成が似たり寄ったりになってしまえば、ユーザーに強い印象を与えるのは難しくなります。
その点、CMSを使えば自由度の高いカスタマイズが可能です。テンプレートのデザインを編集したり、プラグインで独自機能を追加したりと、ブランドの世界観に合わせたサイトづくりが実現できます。コンテンツの見せ方や導線設計も自在に調整できるので、競合との差を明確に打ち出すことができます。
変化の激しい市場で、ユーザーのニーズに素早く応えるためにも、柔軟に進化できるサイト設計は欠かせません。CMSなら、その土台がしっかり整っています。
ECサイトが作れるCMSの世界
ECサイトを立ち上げたいけど、CMSってどれを選べばいいの?そんな疑問に応えるべく、ここではECサイト構築に使えるCMS(コンテンツ管理システム)を、タイプ別にわかりやすくご紹介します。
CMSは大きく2種類に分かれます。一つはソースコードが公開され、自由にカスタマイズできる「オープンソースCMS」。もう一つは、企業が独自に開発し提供する「独自開発CMS」。さらに後者は、利用形態に応じて「クラウド型」「パッケージ型」に分類できます。
それぞれの特徴と、どんな企業に向いているかを見ていきましょう。
1. 自由度とコストパフォーマンスの「オープンソースCMS」
ソースコードがオープンにされており、開発スキルがあれば思いのままにカスタマイズできるのが魅力。テンプレートやプラグインも豊富で、非エンジニアでも扱いやすいのが特徴です。
代表格は「WordPress」。世界中のウェブサイトの4割以上がWordPressで動いており、その中には数多くのECサイトも含まれます。また、ECに特化した国産CMS「EC-CUBE」も人気です。
メリット:
- ライセンス料不要でコストを抑えられる
- カスタマイズ性抜群
- 情報や拡張機能が豊富
デメリット:
- サポートがなく、問題は自己解決が基本
- セキュリティリスクには注意が必要
- 構築には専門的知識が不可欠。業者に依頼する場合、初期構築には数百万から数千万円単位のコスト
向いている企業:
- 自社で技術者を抱えている
- 小〜大規模まで幅広く対応したい
- コストを抑えて自由な設計を目指す
2. スピードと手軽さの「クラウドCMS」
サーバーもセットで、ログインすればすぐに使えるのがクラウドCMSの魅力。月額課金制で、インフラ構築の必要もなし。まさに「今すぐ始めたい!」企業向けの選択肢です。
メリット:
- サーバー管理不要で導入が簡単
- メンテナンスやセキュリティはベンダー任せ
- サポートありで初心者でも安心
デメリット:
- カスタマイズの自由度は低めであり、可能な場合も専門的知識が不可欠
- 大規模サイトには向かないケースも
向いている企業:
- スピード重視で即運用したい
- 技術リソースが限られている
- コストを抑えたい
3. 機能の豊富さと安心感の「パッケージCMS」
サーバーは自社で用意する必要があるものの、豊富な機能としっかりしたサポートが魅力。導入費用はやや高めですが、大規模サイトに適した堅牢な仕組みです。
メリット:
- 法人向けの高機能
- サポートが手厚く、安心して運用可能
- カスタマイズの相談も可能
デメリット:
- 導入にコストと時間がかかる
- 柔軟性はクラウドやオープンソースより劣ることも
- カスタマイズにはより多額なコストがかかる場合も
向いている企業:
- 大規模なECサイトを構築予定
- セキュリティやサポートを最重要視
- 社内にエンジニアがいない企業
最適なCMSを選ぶには?判断ポイントまとめ
・サイト規模と将来性を見据える
ECサイトが成長していくことを考慮し、初期の要件だけでなく拡張性にも注目を。
・管理者のスキルと体制
エンジニアが社内にいないなら、クラウドやパッケージ型がおすすめ。カスタマイズしたいなら技術者の確保を。
・操作のしやすさ(UI/UX)
誰でも扱いやすい管理画面は、チームでのコンテンツ運営や分業にも有利です。
・外部サービスとの連携性
CRMやSNSとの連携で、マーケティングや顧客分析を効率化。API対応などもチェック。
・導入実績が豊富か
同業他社の導入事例があるかどうかも、安心材料の一つです。
どんなCMSを選ぶかは、単に「機能」だけでなく、自社の戦略やリソースとの相性が鍵になります。CMSはECサイトの心臓部とも言える存在。ぜひ、長期的な目線でベストな選択をしてください。
ECサイトCMSの選び方
ECサイトを構築する際には、目的や事業規模に合った構築方法を選ぶことが重要です。ここでは、構築方法を選定するうえで検討すべき主なポイントを紹介します。
1. 初期コストと運用コスト
構築費用は「初期コスト」と「運用コスト」の両方を考慮する必要があります。
- たとえば、初期費用が無料または安価なクラウド型は導入しやすい反面、売上に応じた手数料がかかることもあります。
- 長期的に見ると、初期費用が安いプランでも総合的にコストが高くなる場合があるため注意が必要です。
2. 機能の拡張性
ECサイトは、事業の成長や市場の変化に応じて機能を拡張できる柔軟性が求められます。
- 拡張性が乏しいと、必要な機能が追加できず運用が困難になる場合があります。
- 最悪の場合、既存のサービスでは対応できず、別のサービスに移行する必要も生じます。
3. セキュリティ性
個人情報を扱うECサイトにおいて、セキュリティ対策は必須です。
- サイバー攻撃などによる情報漏洩が発生すると、顧客の信頼を失い、売上や企業イメージに大きな損害が出る可能性があります。
- 損害賠償や訴訟に発展するケースもあるため、構築前に必ずセキュリティ対応を確認しましょう。
4. サポート体制
運用中に問題が発生した場合、迅速に対応できるサポート体制があるかどうかも重要です。
- メール・チャット・電話などのサポート手段の違いや、対応時間帯を事前に確認しておきましょう。
- 実際にサポートを受けられる範囲やスピード感も比較検討が必要です。
5. 目指す年商とサイト規模
将来的な売上規模を想定した上で、構築方法を選ぶことが重要です。
- 年商1億円未満を目指す場合は、初期コストを抑えられるクラウド型やECモールがおすすめ。
- 年商1億円以上を目指す場合は、機能性・拡張性に優れたクラウド型やオープンソース型による開発が適しています。
6. CMS企業の信頼性
CMSにて構築する場合は、CMSを提供している企業の実績や信頼性をしっかり確認しましょう。
- 自社の業種や運用方針に精通している企業を選ぶことで、スムーズな構築・運用が可能になります。
- 長期的な関係を前提に、サポート体制やアップデート対応などの姿勢もチェックしましょう。
7. 今と将来を見据えた要件整理
ECサイトの設計は、現在のニーズだけでなく、将来的な運用を視野に入れて行うことが大切です。
- たとえば将来的に基幹システムとの連携が必要になる場合、初期段階から連携を見越した構成にしておかないと、後から大きなコストが発生することがあります。
- 今後必要になりそうな機能はリスト化して、対応可能な構築方法を選びましょう。
ECサイト向けCMS比較表(概要)
CMS名 | 提供形態 | 特徴 | 適した規模 | カスタマイズ性 | 主な用途 |
---|---|---|---|---|---|
EC-CUBE | オープンソース | 日本国内での実績多数、日本語対応、自由なカスタマイズ可能 | 中〜大規模 | 高い | 日本市場向け本格ECサイト |
Magento | オープンソース | 多言語・多通貨対応、拡張性・スケーラビリティが非常に高い | 大規模 | 非常に高い | グローバル展開を見据えたサイト |
WooCommerce | オープンソース | WordPressと連携可能、初心者でも使いやすい | 小〜中規模 | 中〜高 | ブログ主体のECや小規模店舗向け |
Shopify | クラウド型 | 初期費用が不要で簡単に開始可能、豊富なアプリで機能追加可能 | 小〜大規模 | 中(テンプレート内で) | 個人からプランによっては大規模 グローバル展開も |
BigCommerce | クラウド型 | API連携に優れ、大規模にも対応可 | 中〜大規模 | 中〜高 | 多機能なECをクラウドで運営 |
BASE | クラウド型 | 初期費用0円、スマホ操作に強い | 小規模 | 低〜中 | 個人・小規模事業者向け |
MakeShop | パッケージ型 | 国内向けテンプレート豊富、手厚いサポート | 中〜大規模 | 中〜高 | 日本向けの実用的なECサイト |
カラーミーショップ | パッケージ型 | 初心者でも扱いやすい、販促・顧客管理機能が充実 | 小〜中規模 | 中 | 初心者や中小企業向け |
futureshop | パッケージ型 | BtoB対応、API連携、高い拡張性 | 中〜大規模 | 高い | 法人・卸売対応サイト |
まとめ - ECサイト構築におけるCMS選定のポイント
・自社に最適なCMSを見極めるために
ECサイト構築の成功には、自社のビジネスモデルや運用体制に合ったCMSの選定が欠かせません。求める機能、必要な拡張性、予算、運用リソースなど、複数の観点から自社の要件を整理した上で、最適なCMSを選ぶことが重要です。
・CMSの特性を理解し、冷静に判断する
CMSにはそれぞれ強みと弱みがあります。自由度の高いオープンソース型は柔軟な開発が可能ですが、技術的な対応力が求められます。一方、クラウド型は手軽に始められる反面、細かなカスタマイズには制限がある場合も。こうした特徴を理解し、何を優先すべきかを明確にしたうえで選定しましょう。
・セキュリティと運用の視点も忘れずに
構築後の安定運用を見据え、セキュリティ体制やサポートの有無もチェックすべきポイントです。定期的なアップデートの提供や信頼できるサポート体制など、運用フェーズでの安心感もCMS選びでは重要な要素になります。
・成長を支える柔軟性が、将来の競争力に
ビジネスは常に変化するものです。その変化に対応できる柔軟性と拡張性をCMSが備えているかどうかは、長期的な競争力を左右します。API連携やプラグイン追加といった機能拡張の選択肢を持つCMSは、変化への備えとなり、持続的な成長の土台になります。
ECサイトの構築・運営において、CMSの選定は軽視できない意思決定の一つです。なぜなら、選んだCMSが、その後の事業成長や競争力に大きく影響を与えるからです。単なるシステム選びではなく、ビジネスの土台をどう築くか、という視点が求められます。
現代のECサイトに求められる機能は、日々多様化・高度化しています。商品管理、受注処理、在庫や顧客情報の一元管理といった基本機能はもちろん、キャンペーンの運用やデータ分析、パーソナライズといったマーケティング機能まで、幅広いニーズに応える柔軟なシステム基盤が必要です。
そのため、CMS選定ではまず「自社にとって本当に必要なものは何か」を明確にすることが第一歩です。業種・業態、組織の体制、社内にある技術リソースなどを踏まえたうえで、自社の戦略と相性の良いCMSを見極めることが、将来的な運用負荷や機能制限を回避する近道になります。
また、CMSは一度導入して終わりではありません。ECサイトは長く運営していくものだからこそ、「今」の要件を満たすだけでなく、「これから」の変化にも耐えられる柔軟性や拡張性を持っていることが重要です。API連携やプラグイン対応、将来的な海外展開や複数店舗運営への発展も見据えた選択が、企業の持続的成長を後押しします。
さらに見落とせないのが、ベンダーや制作会社、コンサルタントとのパートナーシップです。特にクラウド型CMSでは、システムそのものだけでなく、提供企業のサポート品質やアップデートの頻度もサービスの一部と言えます。導入後の「困った」をどう支えてくれるのか、その信頼性もCMS選定の大切な判断軸となります。
CMSは、単なるシステム以上の存在です。選び方ひとつで、ビジネスの可能性を広げもすれば、制限してしまうこともある。だからこそ、自社の未来を支えるパートナーとして、慎重かつ戦略的に選ぶことが求められます。
弊社アスタスでは、マーケティング戦略の立案からシステム構築まで、一貫した支援を提供しております。その豊富な実績をもとに、お客様のビジネスモデルや運用体制に最適なCMSの選定を、専門的な視点からサポートいたします。
CMSの導入後も、スムーズな運用を実現するための体制づくりや技術的なフォローまで、きめ細やかにご支援いたします。ECサイトをビジネスの成長エンジンにするために、アスタスはお客様のパートナーとして伴走いたします。