
はじめに
Webサイトやアプリの構築において、CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)の導入は欠かせない時代になっています。従来は「WordPress」のような、フロントエンド(表示部分)とバックエンド(管理部分)が一体となったCMSが主流でしたが、現在はより柔軟性の高い「ヘッドレスCMS」への注目が高まっています。
ここでは、そもそもヘッドレスCMSとは何かを説明したうえで、CMSの選び方を「インフラ環境」「構造」「表示形式」の3つの観点から分類し、最適な選択をサポートします。
1. ヘッドレスCMSとは?
ヘッドレスCMSとは、コンテンツを管理するバックエンド機能のみを持ち、Webページなどの表示を行うフロントエンド(=「ヘッド」)を持たないCMSのことです。
従来のCMSでは、管理画面から記事を投稿すると即座にWebページに反映されるよう、フロントエンドが一体化されていました。しかし、ヘッドレスCMSではコンテンツの提供はAPI経由で行い、表示部分は別途フロントエンドの開発が必要になります。たとえば、ReactやVue.js、Next.jsなどのモダンなフレームワークと連携して使われるケースが増えています。
この構造により、1つのCMSでWebサイト、モバイルアプリ、デジタルサイネージなど、複数のチャネルに同じコンテンツを配信することが可能です。
2. CMSの分類:選び方の3つの軸
CMSは多種多様ですが、導入を検討する際には、以下の3つの軸で分類して理解することが重要です。
【分類①:インフラ環境】クラウドCMS vs オンプレミスCMS
クラウドCMS
- ベンダーがホスティングと管理を行うサービス型CMS
- 例:Contentful、microCMS
- メリット: 導入が早く、サーバー管理不要。自動でアップデートされる
- デメリット: カスタマイズ性が低い。月額課金制
- 向いている企業: スピードを重視したWeb展開を行いたい中小企業・スタートアップ
オンプレミスCMS
- 自社サーバーに設置して運用するタイプ
- 例:WordPress、Movable Type(オープンソース型/パッケージ型)
- メリット: カスタマイズ自由度が高く、機密情報の管理もしやすい
- デメリット: セキュリティや保守管理の負担が重い
- 向いている企業: セキュリティ要件が厳しい企業、独自機能を持たせたい企業
【分類②:構造】一体型CMS vs ヘッドレスCMS
一体型CMS(従来型CMS)
- 管理と表示が一体化されており、すぐに公開可能
- 例:WordPress、Wix、Jimdo
- 特徴: 非エンジニアでも使いやすく、小規模なサイト構築に向いている
- 課題: 表示速度や柔軟性に限界がある。大規模な運用や複数メディア展開には不向き
ヘッドレスCMS(分離型)
- APIを通じて、別のフロントエンドにコンテンツを配信
- 例:Contentful、Strapi、microCMS
- 特徴: フロントとバックが独立しているため、柔軟で高速な開発が可能
- 課題: フロントエンドの開発が必要で、技術者のスキルが求められる
【分類③:表示方法】静的表示 vs 動的表示
静的表示(静的サイトジェネレーターと相性◎)
- 表示にサーバー処理を挟まず、HTMLファイルをそのまま出力
- 例:ヘッドレスCMS+Next.jsやNuxt.js
- 特徴: 表示速度が非常に速く、セキュリティリスクも低い
- 適用例: LP、コーポレートサイト、ブログなど
動的表示(その場で生成)
- データベースと連携し、毎回サーバーでHTMLを生成
- 例:WordPressなどの従来型CMS
- 特徴: 柔軟な表示ができるが、表示速度やセキュリティにやや難あり
3. ヘッドレスCMSが選ばれる理由
- 表示速度の向上: 静的ファイルによる即時表示で、ユーザー体験が向上
- マルチチャネル対応: スマホアプリ、Web、IoT端末などへ一括配信可能
- セキュリティ強化: 動的処理がないため、攻撃対象が少ない
- 開発効率の向上: バックエンドとフロントエンドを別々の専門チームで並行開発できる
4. ヘッドレスCMSを選ぶ際の注意点とデメリット
- 開発者が必須: フロントエンドの開発にReactやVueの知識が必要
- API知識が必要: データ連携や表示制御にはRESTやGraphQLへの理解が必要
- 動的機能は外部ツール頼り: 問い合わせフォームやDB処理は別途導入が必要
5. 主なヘッドレスCMSの比較
CMS名 | 特徴 | 対象ユーザー |
---|---|---|
Contentful | グローバル対応。企業導入実績豊富 | 多言語・多国展開企業 |
Strapi | Node.js製。無料&高カスタマイズ性 | 技術力のある企業 |
microCMS | 日本語対応。国産で初心者にも優しい | 国内中小企業 |
GraphCMS | GraphQLベースで高機能 | API開発者向け |
まとめ
CMSを選ぶ際は、「どんなデバイスに配信するのか」「どこまで自由に開発したいか」「社内にどんな技術人材がいるのか」という観点で考えることが大切です。
ヘッドレスCMSは拡張性と高速性、将来性を重視する企業に最適です。とくに、マルチデバイスでの配信や表示スピード、セキュリティを重視したい場合には、ヘッドレスCMSの導入をぜひ検討してみてください。
また、ShopifyなどのCMSでは併用して使うことも可能です。弊社アスタスでも、ECサイトを長く運用可能なように全力でサポートしておりますので、お気軽にご相談ください。